社会人として働いていると、デートの時間も自由にならない。
朝から人波に揉まれ、数字に神経を擦り減らし、日付が変わる頃に帰宅。 それでも、あまり相手にしないで妬かれると困る。
疲れた身体を引きずって、彼女を車にのせ、深夜の街へと繰り出す。 大人の逢瀬は、人通りも疎らな、二人の世界に浸れる場所が望ましい。 周りに人気の無い所で、おもむろに彼女を持ち上げ、いつものように息を吹き入れる。 深夜に響くGの音…。
ということで、自分の楽器に名前を付けている気色の悪い人がいるかどうかはさて置き、我々JOKERSのメンバーは、毎週末に行われる練習に向けて、日々個人練習を積み重ねています。
その練習の成果を皆さんに披露する場として、2月4日のふくい県民総合文化祭と、2月17日のHCDがあります。 JOKERSの創るビューグルサウンドを、一人でも多くの人に体験していただきたい。 音の壁が飛び掛かってくる体験を皆さんにお約束いたします。 ぜひ、お友達やご家族等をお誘い合わせの上、会場までお越しください!
さて、今年度の我々の活動も残り少なくなって参りました。 このメンバーと共に過ごす時間もあと少し。 練習は楽しくはあるけれども、どこか切ない。 今しかできない一つ一つの練習を、大切に味わっています。
しかし、終わりが近づいているということは、始まりも近づいているということ。 JOKERSは、2018年度の活動に向けて、少しずつ準備を始めています。 人生の1ページを黄色く染めてみようと考えて下さっている皆さんを、我々は心から歓迎いたします。 でも、ビューグルには手を出したことがないし…そもそもビューグルってどんな楽器かわからないし…と考えていらっしゃる方が多いのも事実。 そこで今回は、私が所属する、絶賛募集中!のコントラバスパートをご紹介したいと思います。
普通の吹奏楽部出身のかたが「コントラバス」と聞くと、どうしても弦楽器を思い浮かべがちです。 しかし,本来「コントラバス」とは,音楽における最低音を受け持つパートの総称です。コントラバスクラリネット・コントラバスフルート・コントラバスリコーダー・コントラバスサックスなど、さまざまな楽器が存在します。
我々は「ビューグル」という楽器を吹いています。 ビューグルとは、いわゆる「信号ラッパ」のことです。 ラッパのマークのアレですね。 もともとはノーバルブで、最も音が通りやすいと言われるGの音を基調として、その倍音が出せるだけの楽器でした。 しかし、音楽表現を追求するうちに、だんだんとバルブが増え、音域を拡大するために、アルト・バリトン・コントラバスと、大型楽器が作られるに至りました。 どのパートも、もともとは一つの楽器だったわけですから、音色や性格が共通しているため、英国式ブラスバンドやパイプオルガンのような、重厚なアンサンブルを作ることができるのが特徴であると言えるでしょう。
その最低音域を支えるのが、コントラバスビューグルなのです! G調であるということは、一般的な金管楽器よりも管が長いということになります。 マーチングにおいて、楽器の重量はとても大きな意味を持ちます。 肩に乗せて吹いているだけでも大変なのですが、時には走り、時には無理なホーンズアップを課されるのです。 しかし、我々は重さを足枷とは思いません。 この楽器の重量は、豊かな音を作るための必要経費であるということを理解しているからです。 大会などで別の団体のコントラ吹きやチューバ吹きの方と顔を合わせ、お話しする機会があると、「どう持つんですか?」「重そうですね!」という会話になることは、チューバ・コントラ吹きあるあるですね。
コントラバスビューグルに初めて息を入れた人は、その懐の深さに驚かれるかもしれません。 柔軟性の高い唇さえあれば、いくらでもブレスを受け入れてくれ、豊かな響きを作り上げてくれます。 私の個人的なイメージですが、他の金管楽器がベルから放射状に音を出すのに対し、ビューグルはそのエネルギーを直線的に観客席へ放出するように思います。 ですから、他の金管楽器は、音圧を作るよりもブレンド感を作るのが得意であるように思います。 それに対してビューグルは、個々の音が横に広がるよりも真っ直ぐ飛ぶので、観客が感じる音圧は凄まじいものがあります。その分、ブレンド感を作るには、ステージングに工夫をしたり、息を多く送り込むことでカバーする範囲を広げたりする努力が必要です。 そのため、JOKERSは執拗にブレスコントロールの練習をします。 走りながら何十拍とロングブレスをする練習。 縄跳びをしながら息を止め、その後にロングブレスをする練習。 ミュージックトレーニングのウォームアップの際に必ず行われる、頭がくらくらするほどのブレストレーニング…。
このような練習の末、コントラバスビューグルをきちんと鳴らせる状態になったとき、奏者はそれまでの人生で感じたことのない快感を得られるのです。
楽器と自分が一体となる感覚。 感情が客席へとダイレクトに伝わる感覚。 力いっぱい息を吹き込んだ時の、内臓を持っていかれるような感覚。 この気持ち良さは、他の何にも代え難いものがあります。 ビューグルコーだけが味わえる特権です。 アガります。 現在一般的なチューバを演奏されている方、ぜひ,JOKERSでコントラバスビューグルを体験してみて下さいね!
さて、今シーズンのJOKERSコントラバスビューグルパートは、四人で活動しておりました。 社会人二人に学生二人、住まいは京都・奈良・兵庫,既婚者に独身者と、少ないながらもバラエティに富んだメンバーでした。 そして、バラエティに富んだメンバーと同様、使用している楽器も全て違うものでした。
まずは、カンスタル社製のコントラグランデビューグル。
カンスタル社の最上級モデルで、1999年までのブルーデビルスが使用していた楽器として有名です。 ベルの直径が21インチと非常に大きく、迫力満点!しかも、そのベルは着脱式であり、ケースに入れて保管する際の利便性も考えられています。
ダイナスティ社のコントラと並べて置いてみました。 ご覧の通り、ベルを下にして置いたとき、全体が三角形になるように形作られているため、肩に担いだ際に、自然とベルが上を向くようになっているのです。 管の位置に工夫があり、重さが肩部に乗るように作られており、その全体重量のわりに持ちやすくなっているのが嬉しいところです。
次も、同じカンスタル社製のコントラグランデビューグルですが、先ほどのものよりもより新しいモデルです。
マウスパイプの形状に工夫があり、先ほどのものよりも、重心が3㎝ほど前にくるようになったため、重心がちょうど肩に乗るようになりました。 先ほどのモデルよりもより持ちやすくなっています。 コントラグランデビューグルは、音量の限界値が非常に高く、オーバーブロウしにくい楽器です。 非常に豊かで大きな音量を誇り、比較的明るい音が得意なように思います。
次は、ダイナスティ社製のスーパーマグナムです。
まず、「スーパーにマグナム」という名前が最高にイカしています。 日本語にすると「超強力なコントラバスビューグル」と、ド直球なネーミングです。 1998年にダイナスティ社が開発した最上級モデルで、全てのコントラ奏者の憧れのモデルです。2003年までのマディソンスカウツが使用していたことでも有名です。 4本のバルブを持っているため、全ての金管楽器の中で最も重いビューグル群の中でも、最も重い楽器です。 それは、楽器というにはあまりにも大きすぎます。大きく、分厚く、重いですが、大雑把過ぎることは決してなく,それを鉄塊に堕すか否かは奏者の力量に寄ります。まさにコントラ奏者殺しです。 その響きは豊かで、優しく,底知れない可能性を秘めています。5/4サイズではありますが,ヨークモデルにも引けを取らないほどの強烈で深い響きと豊かな倍音を生み出します。 先ほどのカンスタル社のそれと比較すると、背中の部分が真っ直ぐ作られていることがわかります。 JOKERSでは、異なるメーカーのコントラバスを混合して使用しているため、ベルの角度などの細かな統一に非常に気を配る必要があります。 一つ一つの楽器操作のたびに、どのようにそれぞれのコントラバスを調整するかを話し合っていきます。これがなかなか楽しい作業なのですね。
最後に、同じダイナスティ社のコントラバスです。
こちらは、先ほどまでの三本と比べるとかなり軽く作られており、非常に扱いやすいモデルです。 軽い分、機動力に富んでおり、複雑でベルアクションの多いドリルにも機敏に対応できます。 音質は明るく、音の粒をはっきりと表現することが得意です。ピストンもコンパクトに作られているため、早いパッセージが得意です。 その分、大きい音は前の三台と比較すると苦手です。 非常にピーキーな仕様で、多量の息を受け止めてはくれるのですが、閾値を超えるとすぐにビリビリと割れた音になってしまいます。 ある意味では、前の三台よりも奏者に要求される力量は高いものであると言えます。
どの楽器にもそれぞれに違った魅力があり、素晴らしい個性を持っています。 両腕でホールドし、マウスピースに口をつけ、そしてその重量を奏者の肩で受け止めるコントラバスビューグル。 奏者が全身で楽器の響きを受け止めるこの楽器の演奏は、座奏や一般的なマーチングブラスのチューバとは一味違う喜びを我々に与えてくれます。
2017年度 JOKERSの活動は、まだまだ続いています! 皆さん、ぜひこのコントラバスビューグルに息を通す体験をしに来てくださいね。 我々は、いつでも皆さんが見学・体験にお越しくださることをお待ちしております。 我々のコントラ達は,皆さんに多少息を通された位では浮気心を起こしてそちらになびくことはないと思いますので、どうぞご心配なく…。
コントラバスパート 山本昌範
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